色覚シミュレーションプログラムのオープンソース化

 CUD社会への移行のために色覚シミュレーションの標準的な仕様を無償で公開しオープンソースとする計画

歴史と問題
2002年コンピュータによる色覚シミュレーションが発表され、その後多くのソフトやハードが作られてきました。これらは自分以外の人が見分けにくい色を理解するための手助けとなりカラーユニバーサルデザインの普及に役立ちました。色覚シミュレーションツールは、P型やD型、T型色覚の人の色の見え方を完全に再現するものではないため、CUDOでは当初「CUD校正ツール」と呼んでいましたが、色覚シミュレーションツールとの呼び方が浸透したため、CUDOにおいても「色覚シミュレーションツール」と呼んでいます。

色覚シミュレーションアプリケーションの中にはP型やD型、T型色覚の人の「色の見分けにくさ」を再現できていないものもありました。その原因はいくつか考えられます。
1.プログラムを行う上で参考とするプログラムが入手しにくい。
2.公開されているプログラムの中には計算方法にも独自性があり臨床的なP型・D型色覚の人によるチェックがされていないものがある。
3.あきらかな勘違いによる手法が使われている。
こういったことから、このようなプログラムを使用して配色の検討や検査を行ったのではP型・D型色覚の人に「見分けにくい色使いが問題無い」とされたり逆に「問題の無い色使いが問題あり」とされることが起こってしまいます。

オープンソース化
このような問題を解決するために、まずは簡易的な手法のなるべく正確な色覚シミュレーションのプログラムソースを無償で公開し、さらなる改善のための議論やツールの制作等にも誰もがインターネットなどを介して参加できるようにしたい。そうすることでCUDが当たり前の社会への移行の手助けとすることが出来るのではないかと考えました。
CUDOで認証した色覚シミュレーションはCUDOの検証に基づいたもので、臨床的な検査を経たものです。色覚シミュレーションの説明については、東京大学伊藤啓と石川県工業試験場の前川満良が解説する下記のページをご覧下さい。

「色覚シミュレーション」には、原理的で簡易的な物から複雑な計算式によるもの、臨床的な検証による調整を施したものなど多くの手法が存在します。簡易的な手法では青や黄色に若干赤みがかかって変換されてしまいます。これは理論的には矛盾していることですが、CUDチェック機能の信頼性を大きく損なう物ではありません。なおAdobe、EIZO、NECなどのCUDチェックツールはその点も考慮して改善されています。
/color/CUD_checker/

・コンピュータによる色覚シミュレーションについてはモロン博士とブレッテル博士、ビノ博士らの論文をご覧下さい。→http://vision.psychol.cam.ac.uk/jdmollon/papers/Dichromatsimulation.pdf

公開事例
これらの資料に基づいて、例えば株式会社ガルチはUnityの上でプラグインを開発しCUDOで検証いたしました。このプログラムソースは無料で誰もが利用できる物として公開されています。
ガルチの色覚シミュレーションオープンサイト

注意点
CUDOは色覚シミュレーションに関して下記のように考えています。これはオープンソースの利用についても同様です。

1.色覚シミュレーション結果は、P型・D型・T型色覚の人が実際に感じている色差になるべく近くなくてはならない。そのためには当事者検証員による検証作業が必要である。

2.同様にディスプレイ・印刷物などメディアやディスプレイの機種そしてディスプレイの色温度やガンマ値など設定値などデバイスが変われば調整が必要となる。

3.このように個別の調整を経てない色覚シミュレーションでP型・D型色覚の人に見分けられる色を検討あるいはCUD化が適切であるかどうかを検証すると不具合箇所を見逃す可能性が極めて高い。(逆に各デバイス用の調整プロファイルやキャリブレーション方法が確立された場合は検証の精度が格段に向上する)

4.現在、色覚シミュレーションの検証が可能な団体としては日本の特定非営利活動法人カラーユニバーサルデザイン機構(http://www.cudo.jp/)がある。