東京大学大学院入学式が開かれ(4月12日)、新型コロナウィルス感染を防ぐため式典の様子はインターネットで動画配信されました。藤井輝夫学長は式辞で「東大の構成員とダイバーシティ対応や地球市民としての視点を持って欲しい」と述べられ、さらに、NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構の特別会員 河村正二教授(東京大学 新領域創成科学研究科)のグループの研究を紹介。「ヒトは見ている世界の色そのものが違う」「霊長類の3色型と2色型のそれぞれのメリット」「多様なタイプがいることによるメリット」「人間世界における配色のバリアフリー」にまで話はおよびました。たいへんすばらしいお話でしたので一部をご紹介させていただきます。

「集団のなかの多数派を「標準」とし、そこから外れている人は少数派とし、あるいは何かが欠けていると考えてしまう傾向が人間の社会にはあります。そういうとらえ方は、見えやすいものだけを見るという安易な理解であり、世界の見方を広げる機会を自ら閉ざしているともいえます。たとえば、看板や掲示板をつくるときに、ついつい見分けやすいといわれている配色で塗り分けると、少なからぬ少数派がそのために不便を感じるということがよく起こります。色を見分けにくい人びとのために彩度や明度を工夫する、もしくは色なしでも理解できるようにデザインし、その上で強調のために副次的に色を添えるようにしようというのが、その反省にたった近年の流れです。知識では知っていても、身近に実践していくのは難しいことです。知識が行動に結びつくためには、自分とは異なる属性の人が見ている世界を想像する能力が必要となるでしょう。

多数派を「標準」とすることで、それ以外の少数派の利益や権利が後回しになってしまうことは、社会にはたくさんあります。…(略)…」

「担当者に男女差別等の悪意がなかったとしても、「気づかなかった」ことによって、少数派とされた決して少なくない人たちに不利益をもたらし、不具合を押しつけてしまうことがあるということです。…(略)…人は、そこに存在していない人びとの便宜や不都合には気づきにくく、不公正や違和感に思いがいたりにくいのです。…(略)…」

「こうした無意識のバイアスをなくすにはどうすべきか。自分から声をあげることも大切です。意思決定の場に参加し、対話をすることが必要です。このとき他者の言葉や存在を受容しないと、対話にはなりません。そこでは、他者の声に耳をかたむけることの重要性が浮かびあがってきます。声の大きな多数派の都合だけが通りやすくなっていないかをチェックすることは、いろいろな属性の人が参加しやすい仕組みを作りあげていくうえでも、重要なことです。…(略)…」

詳しくは、こちらからお読みいただけます。
https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/president/b_message2022_05.html