「学校の教科書は、見分けられるものになっているのでしょうか?」
「教科書のCUD化は、どのくらい進んでいるのですか?」
色弱のお子さんをお持ちのご家族の勉強会、お母さんの茶話会でも、教科書のCUD化に関する質問をいただくことは少なくありません。

十年ほど前になるでしょうか。小学校で使われているという教科書を手にしたとき、そのカラフルさに驚きはしましたが「授業が楽しそう!」とも思いました。ところが、読み進めてゆくと「んーーーー」うなり、うなる。最後のページを閉じたときには、しっかり眉間にシワ跡。

授業では、先生と生徒とで教科書を用いてやりとりをします。生徒同士で話し合うこともあれば、一人で予習復習をすることもある。ですから、教科書が色覚の多様性に対応しているかどうかは、P型やD型色覚の子どもたちにとって重要ですし、親御さんの中には教科書展示会に行かれた方もいます。

文科省が学校に対して配布した「色覚に関する指導の資料」には、色覚タイプを問わず児童・生徒が同じように授業を受けることができるように、また、P型やD型色覚の児童・生徒に対して適切なサポートができるように次の内容がまとめられています。

「色覚に関する指導の資料(文部科学省)」PDF:色覚に関する指導の資料
Ⅰ、指導の基本
Ⅱ、学習指導のあり方 
1、板書  
2、掲示物、スライド、OHP、コンピュータ)
3、地図
4、採点、添削
5、実験、実習
6、造形的な表現活動
Ⅲ、進路指導のあり方、等 



では、教科書が色覚の多様性に対応されていないと、どういったときに困るのでしょう。

【小学校低学年(例)】
・漢字:書き順を色分け
1番目に書く線と、3番目に書く線が同じ色に見える。
→書き順を間違えて覚えてしまう。

算数:イラストの色分け/質問:「◯色の花はいくつある?かを問う」
花の色が何色かわからない・花の色が同じ色に見える。
→ 色名と花の色を結び付けられない・花の色を見分けられないため、質問に答えることはできない。

理科:植物(生物)の成長観察
どこがどのように、何色に変化したのかわからない。
→ 変化を絵に描いたり、言葉で表現することができない。発表することができない。

【小学校高学年(例)】
・算数:線の色分け/◯色の線の面積を求めなさい。
線の色の見分けがつかない。→ 色を見分けられない・質問が指し示す線がどの線かわからない
→面積を求めることはできない。

・社会:地図の色分け
隣の県(グループ)の色が違う色だと気づかない。
→地図の情報を間違えて覚えてしまう。先生やクラスメイトとのやりとりがスムーズにいかない。


・理科:実験
液体の色の変化がわからない。
→ 色の変化に気づかない/色の変化はわかるが、何色から何色に変化したのかわからない。

教科書展示会へ行ってきました!〜あるお母さんの感想を紹介します。〜
「江東区の教科書展示会へ行ってきました。平成30年度に検定に合格した小、中、高等学校、特別支援学級用の教科書をすべて閲覧することができました。

本年度は、江東区で採用する教科書を決める年だそうです。
一度採用されると、5年ほどはその教科書が使用されるようですが、CUDマークが採用されていない教科書が多数あることに驚きました。
CUDマークがないものもこうして選択肢に入っていることが残念です。

中学校の社会の地理の教科書では1社しかCUDマークを取得しておらず、マークのない教科書は、色のシミュレーターで確認すると等高線の境目が全く見えない、グラフなどの色に配慮がない。

英語もマークを取得している会社は1社でした。
主語、述語、形容詞、名詞、などが色分けされているものなどがあり、色の見分けがつかないと、必ずしも理解できない、というものではありませんが、そもそもわかりやすくするために色分けしているのに、20人にひとりの男の子にとってはその配慮はなんの意味も持たない、むしろ混乱してしまう色の組み合わせになっているのは残念です。色を変えればいいだけなのに。

CUDマークのある教科書を選んでほしい、CUDの重要性を意見として投函してきましたが、採用されるのは5社ほどあった中の1社ですので、小さな声では厳しいかな、と感じています。

*CUDマークの表示されている教科書は、CUDOにモニター登録されているC型・P型・D型の3タイプによって、配色、情報の伝わりやすさなどを検証、評価し合格した教科書です。

日本の場合、男性生徒の20人に1人の割合で、P型あるいはD型色覚です。
その1人が、もしあなただったら…
その1人が、もしあなたのお子さんだったら…
今の教科書は、わかりやすい内容になっているでしょうか?
学校には、どのような教科書を選択してもらいたいですか?
学校の色覚多様性の対応、工夫の仕方についても、みんなで考えていきましょう。

*女性の割合は、男性と比べると少ないですが、1クラスに女性生徒の2人がP型・D型であったケースもあります。*日本在住の外国人も増えています。欧米では男性生徒の10人に1人がP型あるいはD型色覚です。
*お子さんが、P型あるいはD型色覚であるならば、お子さんが授業中に色の感じ方が異なることで困ることがないように、担任の先生に相談したり、対応をお願いすることをおすすめします。

参考書
考えよう!学校のカラーユニバーサルデザイン